4者のパートナーズ協定に基づき2021年2月からスタートしている
県立野市総合公園での協働の森づくり(2022年5月)
こうち森林救援隊は、平成の大合併で(旧)鏡・土佐山の両村が高知市に合併となり、県都を流れる鏡川の統括的な環境整備が大きな課題となった2005年1月に、鏡川の源流域に拡がる人工林の整備を始めとした森林環境の保全や林業の再生、中山間地域の振興を目的として設立され、今年で19年目を迎えている。
近年では、設立当初の目的に加えて2011年3月の東日本大震災の教訓からも学び、環境保全の目的だけでなく防災対策面や地域コミュニティ確立のための支援も兼ねた川下における里山の環境整備活動にも精力的に取り組んできた。
令和4年度は193回(延2,164名)の活動を展開
2022年度の活動実績は、平日活動部隊(通称:オンちゃん部隊)による春野総合運動公園での公園管理委託業務を主体とした平日活動だけでも163回(延1,197名)に上り、本隊による定例会活動も含めると全体では193回(延2,164名)にも到達している。
また、高知県や高知市を始めとした行政機関との協働活動や県内外の環境先進企業との協働の森づくりも大きく進展してきた。

第1回協定期間の満了時にはヒノキ林の徐間伐整備も実施
2023年3月
中でも、救援隊と四国銀行、高知県や香南市との4者によるパートナーズ協定(2021年2月12日締結)に基づき進められてきた「県立野市総合公園」での協働の森づくりは、県民の財産である県立公園の整備に繋がってきているばかりか「のいち動物園」を始めとした周辺地域全体の環境美化にも大きく貢献してきた。
尚、この協定は2023年3月末で3年間の協定期間が満了したが、2023年4月からも整備エリアの拡大や整備事業費も増額される中で3年間(2026年3月末)の協定期間延長が決定しており、更なる総合的な整備が進む計画となっている。
また、本年度の特記すべき活動は、救援隊の肝煎り事業としてスタートさせている「森づくりの若きリーダー養成事業」(事業年度は2022年7月~2023年6月)が挙げられる。

本年度の新規事業として始まった森づくりの若きリーダー養成事業
(2022年10月 四万十町影野の西内山))
国土緑水の「緑の募金公募事業」を主体に、四国銀行や井上石灰工業の支援も受けて次世代の森づくりを託せる若者の養成を目指して進めているもので、既に15回の講座を開催し延73名(28人)の参加を得ている。
1.環境保全活動
令和4年度は、定例会活動(15回)や特別活動(26回)、その他の活動(163回)などの合計193回の活動を実施、これらの活動に延2,164名が参加した。

春野運動公園内の低木街路樹の剪定作業も実施 (2022年5月) |
高知県スポーツ振興財団からの委託事業として進めている春野運動公園整備では、数年前まで未整備状態で放置されていた5ha余りの雑木林や竹林の整備に加えて、整備後の林内に植樹されてきた桜やモミジなどの養生のための下草刈りも実施してきた。
更に、公園内の下草刈りや低木街路樹の剪定整備も加えると、延561人役(52回)を投入、県民からも愛される美しい公園づくりを目指してしてきた。
春野運動公園での整備以外にも、人が立ち入ることさえ困難となっていた多くの里山の整備にも従事することにより、景観の保全ばかりでなく南海大地震などの緊急時において命を守るための避難場所としての整備にも貢献してきた。
2.林業の再生
林業の再生は木材の利用促進が基本と捉えて、間伐後の木材は可能な限り搬出・搬送に努め、徹底的にその利用促進を図っている。

景観保全等のために伐採された広葉樹も バイオマス資源や薪材などとしての利活用が図られている (2022年5月) |
先人の汗の結晶であり、貴重な木材資源と云える間伐材の有効活用を図るため、先ずは市場への流通を図っている。
また、植樹祭を始めとした各種イベントにおいて、間伐材等を利用した木工教室を開催するなど、木材の素晴らしさをアピールするとともにその利・活用を促進してきた。
そして、市場用材や木工用材としては活用できない曲材や端材などの間伐材や雑木類についても、木質バイオマスとしての資源やチップ材、そしてシンプルな薪材等としての活用も図るなど、新たなエネルギー資源としての利・活用法について、その検証にも努めているところである。
3.中山間地域の振興
毎年、春と秋には土佐山地域等にて植樹祭を開催するなど、TOTOや四国銀行、井上石灰工業を始めとした環境先進企業や行政機関などとの連携のもとに、中山間地域の活性化にも寄与してきたが、新型コロナウィルス感染防止対策の関係から2年度に続き本年度も開催することができなかった。

大盛況だった新年会&交流会(2020年1月) |
また、15年間続けてきた梅ノ木公民館を利用しての宿泊型のボランティア活動も、拠点施設であった梅ノ木公民館が耐震対策等によって建て替えとなり、従前のような宿泊施設としての利用ができなくなったことから残念ながら中止とせざるを得ない状況となってしまった。

13名もが参加した一昨年の秋祭りでしたが・・・(2019年11月) |
更に、毎年梅ノ木地区で開催されている八坂神社の秋祭りには、大太鼓担ぎや槍持ちなどのお手伝いとして参加させてもらうなど地域の伝統行事や文化を守っていくための活動にも力を注いできた。
しかし、こちらも秋祭りの行事は中止となってしまい、地域との関係を継続させることができなかった。
5年度こそは、何とか復活させたいものである。
4.行政や企業との連携
救援隊では、高知市有林の土佐山運動公園裏山(高知市有林)での人工林の整備や、春野総合運動公園や筆山公園などの公園の環境整備にも、ボランティアとして積極的に関与している。
また、高知市が平成24年度に実施した「景観保全や防災を目的としたモデル地区を設定して進められた里山整備事業」では、南ヶ丘ニュータウン北山での景観保全の里山整備にも協力してきた。
南ヶ丘での里山整備事業は、平成25~26年度には緑の募金事業に引き継がれ、その後は令和元年度まで高知放送の24時間テレビ義援金事業として、里山整備や子ども達の自然体験型のイベントとしても継続されてきた。

盛大なイベントだった24時間テレビ義援金事業(平成2020年2月) |
しかし、こちらのイベントも昨年度に続いて新型コロナウィルスの関係で中止となってしる。
地域との協働の関係を復活・継続させていくためにも、一刻も早くコロナ感染が終息することを願いたいところである。
そんな中、林野庁の国庫金事業(平成28~30年度)として始まり、令和元年度からは高知県スポーツ振興財団からの委託事業として整備が継続されている春野総合運動公園での施設整備業務では、平日活動部隊(通称:オンちゃん部隊)による精力的な整備活動が展開されてきた。

サクラやモミジが植樹されている第12駐車場東側法面 (2023年1月) |
令和4年度の委託事業では52回の活動に延べ561人役を投じて、竹林や雑木林の除間伐整備を行うとともに桜やモミジの養生の為の下草刈りや低木街路樹の剪定及び下草刈りも実施するなど、県民の財産である同公園の景観の保全と環境の維持管理に貢献してきた。
また、(株)海昌との協働の森づくりとして進められてきた「美しい里山づくり」事業は、本格的な整備開始から早くも4年が経過した。

4年度の仕上げとなった下草刈り(2022年12月) |
当初は、ゴミ捨て場状態だった雑木林は「地域からも愛され、命を守れる森」として見事な景観へと激変。
4年度の事業としては、植栽された桜やモミジの苗木養生のための3回(32人役)の下草刈り整備を進めてきた。

梶ケ浦防災会との協働作業で整備長浜のノツゴ山(2022年6月) |
その他、行政と地域住民も含めた協力・協働においては、長浜の梶ヶ浦防災会や春野町の芳原自治会などとの協働の森づくりとしての里山の整備を進めるなど、地域の活性化や防災対策、地域住民の環境整備意識の高揚にも寄与してきた。

駐車場でお遍路さん達をお迎えするお大師様も喜んでくれたことでしょう (2023年2月) |
また、四国88カ所第32番札所の禅師峰寺では、巡礼中のお遍路さんからの温かい応援も受けながら、駐車場に覆い被さってきていた広葉樹の除伐採整備を実施、駐車場周辺の環境整備にも寄与。

大型クレーンで吊り上げての伐採でクリアーでした(2023年1月)
更に、しなね様のお祭りでお馴染みの土佐神社では、国の重要文化財である楼門の修復工事のお手伝いとして参道周辺の大小20本余りの大杉の除伐採整備も行った。
その中には、幹部が完全に空洞化してきていた株本1m超えの大杉もあって、地域の安全確保にも寄与してきた。

野市総合公園の修復された階段周辺に植えられたツツジも
彩り豊かになってきました(2023年3月)
救援隊の設立(2005年1月)以来継続されている(株)四国銀行との協働の森づくり事業では・・・
のいち動物園に隣接する「県立野市総合公園」にて、高知県や香南市も含む4者のパートナーズ協定(2021年2月12日締結)に基づく協働の森づくりとしての里山整備が進められた。
本年度は協定期間満了となる3年目を迎えることとなり、6回(延129名)の協働活動による林整備を進め、県民の財産である公園の施設管理にも大きく貢献してきた。
その活動は龍河洞スカイラインを散策中の方々からも脚光を浴びることとなり、数多くの激励と感謝の言葉もいただけることとなった。

井上石灰130周年の森の看板修復のお手伝い(2023年3月) |
井上石灰工業&井上ワイナリーとの協働の森づくりでは、ワイナリーが香南市との協定に基づいて整備する墓地公園周辺の整備に協力する計画でしたが・・・
今年度の実績はなく、同社が県や高知市、森林組合との協働の森事業として進めている高知市鏡の平家の滝に設置している看板修復のお手伝いをさせていただいた。
そして、本年度の特記すべき事業は、森づくり活動を次世代に繋いでいくために新規事業として始めている「森づくりの若きリーダー養成事業」が挙げられる。

春野町芳原で開催された第14回竹林整備講習会(2023年2月) |
この事業のメインの事業費は、国土緑化推進機構の「緑の募金公募事業」で賄われることとなっているが、ボランティア活動の経費には充てられなくなっているところについては環境先進企業である四国銀行や井上石灰工業の支援も受けて運営されている。
本年度は、まだ年度途中(事業期間は2022年7月~2023年6月)ですが、既に15回の講座を開催して28名(延73名)の参加を得ている。
森づくりは人づくり。
何事もそうなのですが、携わってくれる人が育たなければ森づくりは進みません。
このことを肝に銘じて、森づくり活動を次世代の若者たちに繋いでいくための課題に対して、真摯に取り組んでいるところです。
更に、行政機関からは補助金事業としてのバックアップ支援を受けるとともに関係機関との連絡調整やフィールドとしての公有林の提供や公共施設の利用等の便宜を受けている。

行政や企業、ボランティアが大集合の筆山公園整備(2023年1月) |
そして、企業からは活動資金への支援やボランティア活動への積極的な関与・協力を受けるなど、4年度においても三者による協働の取り組みは着実に拡がりを見せてきている。
このように、企業や行政、地域住民との協働に向けての動きは、救援隊の進める行政や企業そしてボランティアや地域住民との未来に繋がる「協働の森づくり」を支える大きな柱の一つとなってきている。
5. ボランティアのネットワークづくり
アジロ山を守る会が実施している「森のようちえん」イベントの応援など、他団体との協働活動や交流にも積極的に関与している。

アジロ山で毎月開催されている「森のようちえん」イベントも応援 (2021年11月) |
また、企業内ボランティア団体である四国銀行森林サークルとの「絆の森」での協働間伐や新たに始まっている「県立野市総合公園」での協働の森づくりとしての里山整備、更には新規発足を目指しているボランティア団体等への研修対応の受け入れなどにも力を注いでいる。
2015年度からから高知県シルバー人材センター連合会からのご要請にお応えして、毎年開催してきている刈払い機やチェーンソーの取扱い安全講習会ですが・・・

14名が対象となった高知市でのチェーンソー取扱い安全講習会 (2022年6月) |
令和4年度においても、高知市シルバー人材センターの会員を対象としたチェーンソー講習会を開催、9名の環境を守る新たな担い手も送り出してきた。
また、高知県森と緑の会主催の「森林保全ボランティア養成講座」にも講師として参画・応援、4年度には5名の講習生の輩出にも寄与してきた。
6.広報・宣伝活動
救援隊の活動については、これまでテレビ高知の「頑張れ高知!eco応援団」を始めテレビやラジオ、新聞、各種季刊誌などで毎年の様に取り上げられてきたが・・・

7月の開講式が高知新聞に掲載(2022年7月)
4年度においても、野市総合公園で行われた四国銀行との協働の森づくり活動や「森づくりの若きリーダー養成講座」の香北講習会が「頑張れ高知!eco応援団」で放映された。
また、この養成講座については開講式の様子が高知新聞に掲載されるなど、救援隊活動は広く世間に周知されることとなってきた。
更に、独自に発信しているインターネットのブログ情報では救援隊の活動状況の詳細を掲載(2008年2月~2023年3月末で2,024号)するとともに、事務局長個人のFBなどでも情報発信に努めているところである。

12月養成講座の大学生5人組(2022年12月) |
最近では、このブログやFBによるインターネット情報を基に新しい仲間の増加が目立ってきているが、取り分け若年層や女性の関心が高くなってきている。
令和5年3月末現在の隊員数は126名(1年間活動に参加できなかった隊員は除外中)だが、女性の割合は36.5%(46名)に達している。
7.最後に・・・
救援隊の設立は、2005年1月。
今年の1月には丸々18年を迎えることとなったが、積み重ねてきたこの18年間の実績は大変意義深いものとなっており、我々にとって大きな自信に繋がるとともに現在の救援隊活動の原動力の一つともなっている。

新年度においても、救援隊設立頭書の主旨や目的を忘れることなく、隊員一同想いを一にして「市民の森づくり事業」を推し進めていく計画となっています。
皆さま方の更なる熱いご支援をお願いいたしまして、令和4年度の活動実績報告とさせていただきます。
事務局長 中川睦雄