パートナーズ協定に基づき、新たにスタートした四国銀行との協働の森づくり(2021年12月)
こうち森林救援隊は、平成の大合併で(旧)鏡・土佐山の両村が高知市に合併となり、県都を流れる鏡川の統括的な環境整備が大きな課題となった2005年1月に、鏡川の源流域に拡がる人工林の整備を始めとした森林環境の保全や林業の再生、中山間地域の振興を目的として設立され、今年で18年目を迎えている。
近年では、設立当初の目的に加えて2011年3月の東日本大震災の教訓からも学び、環境保全の目的だけでなく防災対策面や地域コミュニティ確立のための支援も兼ねた川下における里山の環境整備活動にも精力的に取り組んできた。
令和3年度は190回(延2,400名)の活動を展開
令和3年度の活動実績は、厳しいコロナ禍の中にも関わらず平日活動部隊(通称:オンちゃん部隊)による林野庁の国庫金事業や春野総合運動公園での公園管理委託業務を主体とした平日活動だけでも163回(延1,646名)に上り、全体では何と190回(延2,400名)にも到達した。
また、県や市を始めとした行政機関との協働活動や県内外の環境先進企業との協働の森づくりも大きく進展し、中でも救援隊と四国銀行、高知県や香南市との4者によるパートナーズ協定(2011年2月12日締結)に基づき進められた県立野市総合公園での協働の森づくりはこれまでにもなかった前衛的なものとなるなど、救援隊の目指している「市民の森づくり事業」はすっかり定着するとともに更なる発展へと拡がりを見せてきている。
1.環境保全活動
令和3年度は、定例会活動(14回)や特別活動(13回)、その他の活動(163回)などの合計190回の活動を実施、これらの活動に延2,400名が参加した。

春野運動公園での植樹祭では、160株を植樹、遊歩道も敷設された(2022年3月) |
未整備状態で放置されていた5ha余りの雑木林や竹林の除間伐整備を進めるとともに、整備後の林内には桜やモミジなど320株の観賞木の植樹や遊歩道も敷設整備するなど、県民からも愛される美しい里山づくりを目指してしてきた。
こうした活動で、都市部住民の憩いの場としての身近な里山の環境整備が進むとともに、南海大地震などの緊急時の避難場所としての防災対策にも寄与することができてきている。
2.林業の再生
林業の再生は木材の利用促進が基本と捉えて、間伐後の木材は可能な限り搬出・搬送に努め、徹底的にその利用促進を図っている。

景観保全のために、伐採された広葉樹もバイオマス資源や薪材などとしての 利活用が図られている(2022年3月) |
先人の汗の結晶であり、貴重な木材資源と云える間伐材の有効活用を図るため、先ずは市場への流通を図っている。
また、2度の植樹祭に加えて、市内各所で開催された各種イベントにおいて、間伐材等を利用した木工教室を開催(12回)するなど、木材の素晴らしさをアピールするとともにその利・活用を促進してきた。
そして、市場用材や木工用材としては活用できない曲材や端材などの間伐材や雑木類についても、木質バイオマスとしての資源やチップ材、そしてシンプルな薪材等としての活用も図るなど、新たなエネルギー資源としての利・活用法について、その検証にも努めているところである。
3.中山間地域の振興
毎年、春と秋には土佐山地域等にて植樹祭を開催するなど、TOTOや四国銀行、井上石灰工業を始めとした環境先進企業や行政機関などとの連携のもとに、中山間地域の活性化にも寄与してきたが、新型コロナウィルス感染防止対策の関係から2年度に続き本年度も開催することができなかった。

大盛況だった新年会&交流会(2020年1月) |
また、15年間続けてきた梅ノ木公民館を利用しての宿泊型のボランティア活動も、拠点施設であった梅ノ木公民館が耐震対策等によって建て替えとなり、従前のような宿泊施設としての利用ができなくなったことから残念ながら中止とせざるを得ない状況となってしまった。

13名もが参加した一昨年の秋祭りでしたが・・・(2019年11月) |
更に、毎年梅ノ木地区で開催されている八坂神社の秋祭りには、大太鼓担ぎや槍持ちなどのお手伝いとして参加させてもらうなど地域の伝統行事や文化を守っていくための活動にも力を注いできた。
しかし、こちらも一昨年の秋祭りの行事は中止となってしまい、地域との関係を継続させることができなかった。
4.行政や企業との連携
救援隊では、高知市有林の土佐山運動公園裏山での人工林の整備や、春野総合運動公園や筆山公園などの公園の環境整備にも、ボランティアとして積極的に関与している。
また、高知市が平成24年度に実施した「景観保全や防災を目的としたモデル地区を設定して進められた里山整備事業」では、南ヶ丘ニュータウン北山での景観保全の里山整備にも協力してきた。
南ヶ丘での里山整備事業は、平成25~26年度には緑の募金事業に引き継がれ、その後は令和元年度まで高知放送の24時間テレビ義援金事業として、里山整備や子ども達の自然体験型のイベントとしても継続されてきた。

盛大なイベントだった24時間テレビ義援金事業(平成2020年2月) |
しかし、こちらのイベントも昨年度に続いて新型コロナウィルスの関係で中止となってしる。
地域との協働の関係を復活・継続させていくためにも、一刻も早くコロナ感染が終息することを願いたいところである。
そんな中、林野庁の国庫金事業(平成28~30年度)として始まり、令和元年度からは高知県スポーツ振興財団からの委託事業として整備が継続されている春野総合運動公園での施設整備業務では、平日活動部隊(通称:オンちゃん部隊)による精力的な整備活動が展開されてきた。

雑木類に覆われて展望台の存在さえも忘れかけられていた春野総合運動公園の アーチェリー場駐車場周辺の景観も大変貌を遂げてきた(2022年3月) |
令和3年度の委託事業では70回の活動に延べ773人役を投じて、竹林や雑木林の除間伐整備を行うとともに低木街路樹の剪定や下草刈りも実施、県民の財産である同公園の景観の保全と維持管理に貢献してきた。
また、(株)海昌との協働の森づくりとして進められている「美しい里山づくり」事業は、本格的な整備開始から3年目を迎えてゴミ捨て場状態から「地域からも愛され、命を守れる森づくり」として見事な景観へと激変させており、3年度の事業としては植栽された桜やモミジの苗木(267株)の養生のための下草刈り整備を進めてきた。

3年度末の最後の仕上げとなる下草刈り(2020年3月) |
令和3年度においては、3回(35人役)の下草刈り整備を実施、環境保全に努めてきた。
その他、地域住民との協力・協働においては、長浜の梶ヶ浦防災会や春野町の南ヶ丘自治会などとの協働の森づくりとしての里山の整備を進めるなど、地域の活性化や地域住民の環境整備意識の高揚にも寄与してきた。

梶ケ浦防災会との協働作業で整備された長浜のノツゴ山(2021年5月) |
また、四国88カ所第32番札所の禅師峰寺では、巡礼中のお遍路さんからの温かい応援も受けながら10回(96人役)の竹木類の除伐採整備を実施するなど、歩き遍路道周辺の竹林や雑木林の環境整備にも寄与してきた。

頑張れ高知ECO応援団の取材も受けながらの植樹祭開催でした (2021年11月) |
11月12日(土)には「お遍路さんへのおもてなしの心を育む植樹祭」(62名が参加)も開催されたが、この取り組みはテレビ高知の「頑張れ高知ECO応援団」の取材を受けることとなり、広く県民にもアピールされることとなった。
救援隊の設立(2005年1月)以来継続されている(株)四国銀行との協働の森づくり事業では・・・
「絆の森」での人工林の除間伐整備(1回34人)に加えて、のいち動物園に隣接する「県立のいち総合公園」では、高知県や香南市も含む4者のパートナーズ協定(2021年2月12日締結)に基づいて協働の森づくりとしての里山編が進められた。

木柵とともに腐敗が激しく立ち入り禁止となっていた階段も修復完了 公園内での散策も可能となりました(2021年12月) |
本年度の里山整備は3年計画(2年度~4年度)の2年目にあたり、7回(172名)の活動で森林整備のみならず高知県木材普及協会高知県支部の支援も受け、腐敗していた木柵や階段の修復工事も行うなど、公園施設の管理にも大きく貢献してきた。

春の協働活動では、除間伐整備とともに階段周辺に ツツジ(30株)やサツキ(30株)、そして山桜の大苗(1株)の植樹も行われた (2021年12月) |
その活動は龍河洞スカイラインを散策中の方々からも脚光を浴びることとなり、数多くの激励と感謝の言葉もいただけることとなった。
更に、井上石灰工業&井上ワイナリーとの協働の森づくりでは・・・

墓地公園の整備とともにショップ開設用地確保のための除伐採応援も実施 (2021年10月) |
純県内産ワインづくりを目指している井上ワイナリーでは、香南市との協定に基づき社屋に隣接する墓地公園管理を進めているところであるが、救援隊はこの活動をショップ建設用地確保のための除伐採整備とともに応援させていただくこととなり、3年度には9回(85人役)の整備活動を行った。

井上孝志社長のこぶしにも力が籠っておりました~!(2021年11月) |
耕作放置地が増加するなど衰退していく高知の農業の再生や観光振興、地域の活性化などを目指してスタートさせている純県内産ブドウの土佐ワイン。
救援隊としてももろ手を挙げて応援させていただきたいところでして、今後の協働関係の推進を誓わせていただいた。
この他、行政からは補助金事業としてのバックアップ支援を受けるとともに関係機関との連絡調整やフィールドとしての公有林の提供や公共施設の利用等の便宜を受けている。
そして、企業からは活動資金への支援やボランティア活動への積極的な関与・協力を受けるなど、3年度においても三者による協働の取り組みは着実に拡がりを見せている。
このように、企業や行政、地域住民との協働に向けての動きは、救援隊の進める行政や企業そしてボランティアや地域住民との未来に繋がる「協働の森づくり」を支える大きな柱の一つとなってきている。
5. ボランティアのネットワークづくり
アジロ山を守る会が実施している「森のようちえん」イベントの応援など、他団体との協働活動や交流にも積極的に関与している。

アジロ山で毎月開催されている「森のようちえん」イベントも応援 (2021年11月) |
また、企業内ボランティア団体である四国銀行森林サークルとの「絆の森」での協働間伐や新たに始まっている「県立野市総合公園」での協働の森づくりとしての里山整備、更には新規発足を目指しているボランティア団体等への研修対応の受け入れなどにも力を注いでいる。
平成27年度から高知県シルバー人材センター連合会からのご要請にお応えして、毎年開催してきている刈払い機やチェーンソーの取扱い安全講習会ですが・・・

14名が対象となった高知市でのチェーンソー取扱い安全講習会 (2022年1月) |
令和3年度においても、高知市や香美市などのシルバー人材センターの会員を対象とした講習会を4度開催、延45名の環境を守る新たな担い手の養成にも寄与してきた。
6.広報・宣伝活動
救援隊の活動については、これまでテレビ高知の「頑張れ高知!eco応援団」を始めテレビやラジオ、新聞、各種季刊誌などで毎年の様に取り上げられてきたが、3年度も禅師峰寺で行われたお遍路さん奉公となる「秋の植樹祭」が「頑張れ高知!eco応援団」で放映されるなど、救援隊活動は広く世間に周知されることとなってきた。
更に、独自に発信しているインターネットのブログ情報では救援隊の活動状況の詳細を掲載(平成20年2月~令和4年3月末で1,879回)するとともに、事務局長個人のFBなどでも情報発信に努めているところである。

7月の鳥坂山整備では、新入隊員を含む3名の高知大生が活動に参加 (2021年7月) |
最近では、このブログやFBによるインターネット情報を基に新しい仲間の増加が目立ってきているが、取り分け若年層や女性の関心が高くなってきている。
令和4年3月末現在の隊員数は111名(1年間活動に参加できなかった隊員は除外中)だが、女性の割合は40.5%(45名)に達している。
7.最後に・・・
救援隊の設立は平成17年1月。
今年の1月には丸々17年を迎えることとなったが、積み重ねてきたこの17年間の実績は大変意義深いものとなっており、我々にとって大きな自信に繋がるとともに現在の救援隊活動の原動力の一つともなっている。

新年度においても、救援隊設立頭書の主旨や目的を忘れることなく、隊員一同想いを一にして「市民の森づくり事業」を推し進めていく計画となっています。
皆さま方の更なる熱いご支援をお願いいたしまして、令和3年度の活動実績報告とさせていただきます。
事務局長 中川睦雄